増える高齢者、減る「老人クラブ」 運営岐路に

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 お年寄りの数はどんどん増えている。それなのに、地域で活動する「老人クラブ」の会員は、どんどん減っている。新規加入が少ないため、クラブ内の“高齢化”も顕著だ。価値観が多様化した現代において「仕方がない」という声もある。一方で、老人クラブの運営は自治体などが支援し、地域社会で一定の役割を担ってきた。岐路に立つ老人クラブ、皆さんはどう思いますか?(中島摩子)

■役員高齢化、後継者探し困難に

 全国老人クラブ連合会によると「おおむね60歳以上」を対象にした全国の老人クラブは約10万、会員数は約568万人を数える。老人福祉法で「老人福祉を増進することを目的に事業を行う者」として位置づけられており、生活を豊かにする楽しい活動▽地域を豊かにする社会活動-などに取り組むとしている。

 兵庫県内では2016年4月時点で、5032クラブ、31万1549人が活動。阪神間6市1町では計1099クラブ、計5万9753人だ。

 西宮市の「夙寿会(夙川老人クラブ連合会)」には約250人が加入し、「ウオーキングクラブ」や「歴史講座」「カラオケクラブ」「児童見守りクラブ」など17の活動がある。

 その一つが、「男の料理クラブ」。月1回集まり、今月1日には節分に合わせて「恵方巻き」や「イワシの塩焼き」などを作った。メンバーはアシスタントの中村洋子さん(78)含め7人。90歳以上も2人いる。大石勝重さん(90)は「和気あいあいと寄って、ごちそうを食べるのが楽しい」と笑顔。高井峯夫さん(91)は「妻が亡くなって一人暮らしになり、料理をしようと入会した」と話す。

 ただ、メンバーは以前より減り、中村さんは「新しい人が入らず、私たちは年を取っていく。段々と体がついていかなくなる、というのはある」とこぼす。

 「役員の定年は80歳までと決まっているが、私はすでに82歳。“跡継ぎ探し”が難しい」と話すのは、夙寿会の児島章範会長だ。「友愛、健康、奉仕」をモットーに、仲間作りを呼び掛けてきた。

 しかし、自分より若い世代を勧誘しても、「老人クラブは、私はまだ…」「個人で趣味の活動をしている」などと断られてしまう。「まずは『面白そう』と関心を持ってもらうことが大事」と児島会長。会員以外も参加できる「映画観賞会」「いきいき体操」などの企画にも取り組んでいる。

■「行事が負担」兵庫県内の会員数減

 兵庫県のまとめをもとに、2016年と、その10年前の06年を比較すると、県内全体の会員は約7万8千人減り、クラブも約770減った=グラフ。阪神間でも尼崎や伊丹、宝塚市などで減少が目立っている=表。

 「県老人クラブ連合会(のじぎくクラブ兵庫)」=神戸市中央区=によると、会員減少の理由の一つが「役員をしたり、行事に参加するのが負担という意見」だ。会員の高齢化が進んで役員の引き受け手がなく、組織が維持できなくなり、解散や休止をしたクラブもあるという。

 ほかに「60代の人を誘っても『まだ仕事しているから』と断られる」というケースや、「社会的活動や趣味の活動は、ほかでやっている」など、ライフスタイルの多様化も背景あるという。尼崎市の男性(68)は写真クラブを三つ掛け持ちし、60歳で退職した後も、忙しく過ごしている。老人クラブには入っていない。

 さらに「60歳代で『老人』と言われるのは抵抗がある。自分のイメージでは70歳代後半とか80歳ぐらいからが、老人なんだけど…」といい、「老人クラブ」という名前に対する戸惑いもあると話した。

■会員増加へあの手この手

 会員減少の危機感から、地域の各クラブや市町ごとの連合会などは、新たな会員を呼び込む知恵を絞っている。

 伊丹市老人クラブ連合会では、クラブの会員証を市内の商店で見せると、割引などが受けられる特典を作っている。事務局長の横山一彦さん(73)は「勧誘すると、『老人クラブに入ると何か特典は?』と聞かれることがある。地域の商店街に“営業”に行き、35店舗の協力を得ることができた」と話す。

 同連合会には「若手部」(7人)があり、活動の活性化を目的に、約8年前から「ミニ運動会」も開いているという。横山さんは「老人クラブを通じて人とのつながりができ、地域に貢献できる。地道に会員を増やしていきたい」と語る。

 また、芦屋市の老人クラブ連合会は「はぴねすクラブ芦屋」、西宮市は「西宮いきいきクラブ」など、「老人」を名乗らない愛称を設けている。

 そんな中、全国老人クラブ連合会は2014年度から18年度の5年間で「100万人会員増強運動」を展開中。兵庫県老人クラブ連合会も「2・5万人会員増強運動」を進め、PRに力を入れている。
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