鶏肉 半数に薬剤耐性菌 高齢者ら感染時、抗菌薬治療に支障も 毎日新聞2018年4月3日 東京朝刊

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 国産や輸入の鶏肉の半数から抗生物質(抗菌薬)が効かない薬剤耐性菌が検出されたとする調査結果を、厚生労働省研究班がまとめた。健康な人なら食べても影響はないが、免疫力が落ちた病人や高齢者らの体内に入って感染すると、抗菌薬による治療が難しくなる恐れがある。

 食肉検査所などで約550検体を調べ、全体の49%から耐性菌が見つかった。家畜の成長を促す目的で飼料に混ぜて抗菌薬が与えられることがあり、鶏の腸内にいる菌の一部が薬剤耐性を持つなどして増えた可能性がある。

 鶏肉から耐性菌が検出された例は過去にもあるが、研究班の富田治芳・群馬大教授は「半数という割合は高い」と指摘。家畜や人で「不要な抗菌薬の使用を控えるべきだ」と訴えている。

 鶏肉の小売業者などでつくる日本食鳥協会は「耐性菌の低減には国の方針に基づいて積極的に取り組んでいきたい」とコメント。耐性菌に限らず食中毒を防ぐため、食べる前に十分に加熱するよう呼び掛けている。

 牛や豚は今回の調査に含まれていない。家畜由来の耐性菌による感染症は医療現場で大きな問題となっており、主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)でも対策が議論されている。

 研究班は2015~17年度に、国内3カ所の食肉検査所で集めた鶏肉や、ブラジルなど5カ国から輸入された鶏肉で薬剤耐性菌の有無を調査。その結果、全体の49%から「ESBL産生菌」か「AmpC産生菌」という耐性菌を検出。国産では59%、輸入品は34%だった。国内で抗菌薬の種類や使用量に大きな差はなく、全国的に同様の傾向とみられる。

 これらの耐性菌は、肺炎などの感染症治療に広く使われる「第3世代セファロスポリン薬」がほとんど効かない。国内の病院を訪れた患者の体内から検出されるケースが増えており、院内感染の原因になると懸念されている。

薬の使い方再考を 薬剤耐性菌に詳しい東邦大の舘田一博教授(微生物感染症学)の話
 ESBLやAmpC産生菌などの耐性菌はこれまでにも食肉から検出されている。健康な人なら体内に入っても影響はなく、他の薬で治療できる菌だ。だが、病気などで免疫力が落ちているとこれが原因で感染症を発症する可能性があり、食肉などを通じて市中に広がることが懸念されている。耐性菌対策には家畜も含めた取り組みが必要だ。解体作業で食肉に付着するのを防ぐのに加え、飼料添加物としての抗菌薬を減らすなど、使い方を考えていく必要がある。

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