2020/05/15 6月号 えがお歌壇
こんにちは。今月のお題は春です。今月はさっそく歌を見ていきたいと思います。よろしくお願いします。
松陰寺の多羅葉の葉を一枚いただきて書く春の一文字 大石規余江
松蔭寺は鶴見の寺尾のあたりにあるお寺ですね。初案は「松陰寺の名木多羅葉の葉の一枚いただきて書く」となっていましたが、観察が効いたお歌なので、名木という説明は必要ないと思います。いかがでしょうか。
春の朝コーヒー豆を挽くときは甘い匂いが胸に広がる 藤野富士雄
初案、「豆を挽く甘い匂いの春の朝笑顔と共に胸に広がる」楽しい気持ちはよく伝わる一首ですが、コーヒー豆の甘い匂いがもっと伝わるようにするには、はっきり何が広がったかを書いたほうがいいかもしれません。一例ですが、笑顔を省いてすっきりさせてみました。いかがでしょうか。
春よ来い新型コロナ捨てて来い 争い事は皆捨てて来い 遠山三四藏
このままいただきました。完成されている歌ですが、コロナウィルスの歌はたくさん歌われているので、ここからもうひと工夫あるとなおよいです。
春に咲くすみれの花よむらさきの少女歌劇の星も生まるる 道家俊雄
やや宝塚のことだな、とわかりやすい一首ですが、一首はよく伝わります。一点、春に咲くすみれの花「は」となっていたのが、上の句と下の句の距離感が伝わりにくいのでかえてみました。いかがでしょう。
春だから花のあれこれ撮りためてぼやけた写メに顔を顰める 政幸
花と春の組み合わせのお歌、やや平凡になりがちです。このお歌は写メに焦点があたっています。
それはもう花壇に並ぶチューリップいつから春か教えて欲しい 萩原里美
初案は「教えて欲しい春待つ時間」でしたが、春待つ時間がやや整理されていない印象があります。なめらかに文章として伝えるために少し直してみました。いかがでしょう。