「地域密着型ナース」美作で活躍 高齢者の健康維持支援の十時さん

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「地域密着型ナース」美作で活躍 高齢者の健康維持支援の十時さん

●考察

コミュニティーナースの発足者の講義を聞いた経験がある。
自分の親のことについて予防の観点が医療に少ないことで、突然亡くしてしまった、ことがきっかけだ。
その思いを実際の活動につなげていくことでコミュニティーナースが誕生した。

これからは「病気になったから」ではなく「病気にならないための小さな活動」を継続する仕組みを大切にしていく。
同じような考えを高齢者の生活、認知症の対応などに活かしていきたい。

ここまで考察●

 地域に密着して住民の健康管理を手助けする「コミュニティーナース」が、人口減少と高齢化が進む美作市上山地区で活躍している。看護師の十時(ととき)奈々さん(42)=福岡県出身。昨年10月の移住後、高齢者宅を毎日のように訪問し、健康維持だけでなく、過疎地域の高齢者の生活を豊かにする存在となっている。一方で雇用が確立されておらず、持続的な活動への不安も抱える。

 「どこか痛いところはない?」「昨日は何しとったん」

 4月下旬。十時さんが細い山道に車を走らせ、上山地区の中腹で1人暮らしをしている男性(94)宅を訪ねた。数日前に転んでけがをした男性。腕のばんそうこうを貼り替え、世間話をしながらさりげなく健康チェックをする。

 約1時間の滞在。男性は「孫みたいに気軽に話せるので、ちょっとした体調面の悩みを言いやすい」と訪問を心待ちにする。

 一人一人把握 

 十時さんは、神戸市内のリハビリ病院で看護師として14年間勤めた後、訪問看護を6年行ってきた。「病気が重くなる前に、高齢者をサポートすることが必要ではないか」との思いが募り、2017年春にコミュニティーナースの養成講座に参加。主催者の紹介で、上山地区にやってきた。

 上山地区は人口208人(5月1日現在)で、65歳以上の高齢者は92人。十時さんはそのうち施設などに入っていない約60人の高齢者宅を、多いときには1日3軒訪問する。血圧測定や健康面の不安を聞き、必要に応じて受診を促す。一人一人の病歴や服用している薬、趣味、生きがいなどを記入したカルテの作成も進めており、現状の把握やアドバイスに役立てる考えだ。

 さらに上山地区周辺の地域サロンにも出向き、健康体操を指導。高齢者らの集いの場をつくることで、住民同士が助け合い、健康で豊かに暮らせる関係づくりを目指す。

 「接着剤」に 

 ただ、コミュニティーナースは職業として確立されているわけではない。高齢者宅の訪問や健康チェックなどの費用は無料で、事業者側が負担している。

 京都府綾部市や奈良県山添村などは、国の補助を受けられる「地域おこし協力隊」として採用した看護師が活動しているものの、最長3年間の任命期間後の「雇用主」は明確になっていない。

 十時さんの場合、在籍するNPO法人・みんなの集落研究所(岡山市)から給料を得ている。同研究所などが上山地区で進める中山間地域の課題解決などを目指すプロジェクトに対する、一般財団法人「トヨタ・モビリティ基金」の助成金が原資だが、19年9月までの期限付きだ。

 「契約終了後も活動したいが、生活できるか…」と十時さん。訪問看護をしながら、地区を拠点に予防からみとりまでケアできれば―などと考えている。

 地域医療に詳しい奈義ファミリークリニック(岡山県奈義町豊沢)の松下明所長は「コミュニティーナースは1人暮らしの高齢者ら社会的に孤立しがちな人を行政、医療機関、地域とつなぐ『接着剤』の役割を担っている」と重要性を強調。その上で「自治体がインフラの一つとしてとらえ雇用する手段もあるのではないか」と指摘する。

 コミュニティーナース 島根県の看護学生が病気予防や健康づくりなどを目的に提唱し、2011年ごろに誕生。人口減少や高齢化で医療が届きにくい地域に定住し、住民と日常的に接して関係を築き、相談や病気の予防、健康意識の高揚を実践し健康的なまちづくりに貢献する。病院や行政への橋渡しも行う。現在では全国で約100人が活動。岡山県内では上山地区のほか、勝央町にデイサービスをしながら活動している人がいる。
(2018年05月14日 09時45分 更新)

カテゴリ:
美作市 主要 医療・福祉 シニア

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