高齢者、不安で引っ越せず 減額で転居指導…「友だちいなくなる」孤立感 生活保護の「住宅扶助」改定

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生活保護のうち家賃に充てる「住宅扶助」が2015年に改定されたことで、全国の約60万7千世帯が減額対象となり、転居するよう指導されている世帯もあることが、厚生労働省の調べで分かった。高齢者は特に転居が難しいというが、どんな事情があるのだろうか。

 北九州市で1人暮らしをする藤江さん(76)=仮名=も、15年の改定で扶助の限度額が月額3万1500円から2万9千円に引き下げられた。実際の家賃がオーバーしてしまい、市営住宅に引っ越すよう、市から求められた。

 「見学してみたけれど家の前が坂道で、近くにスーパーもなくて」。藤江さんは足腰が悪く、とても生活できないと感じた。

 転居をためらう理由は他にもあった。「一番困るのは、友だちがいなくなることなんです」

 今の木造アパートに住み始めて25年。10年前に夫が大工を辞めて、生活保護を受けるようになった。夫を失った後も、近所の友だちが野菜や米を分けてくれ、車で買い物にも連れ出してくれる。「家で倒れても、大きな声で叫べば隣が駆けつける。1人暮らしができるのは周りの支えがあってこそ」。市に事情を訴え、限度額をこれまで通りに据え置く「経過措置」を認めてもらった。

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 改定により、福岡県では福岡、北九州、久留米3市の受給者が引き下げ対象となった。

 1人暮らし世帯の限度額は、福岡3万6千円(下げ幅千円)、北九州2万9千円(同2500円)、久留米3万1千円(同千円)、他の市町村は3万2千円。北九州市保護課は「全国一のペースで人口減少が進んでいることもあり、家を選ばなければ限度額以下で見つかる」と話す。

 厚労省が16年10月時点で全国調査を行ったところ、改定によって家賃が限度額を超え、扶助額を引き下げられたのは約27万世帯。このうち約1万9千世帯が転居した。そのまま住み続けた世帯の6割余りは、引っ越すと通院や通勤ができないなどとして経過措置が取られている。だがこうした事情が認められず、転居するよう指導されている世帯も約4万9千に上る。

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 さらに高齢者の場合は、伴侶が亡くなって世帯人数が減り、住宅扶助が減額されるリスクもある。この場合の経過措置はなく、引っ越すか、生活費をさらに切り詰めるしかない。

 藤江さんも4年前に夫が亡くなった。住宅扶助は2人世帯から単身世帯の金額に減らされ、月々の家賃の「赤字」分は、本来食費や衣服費などに充てる生活扶助費から工面してきた。冬場はガス代がかさむため風呂に入る回数を減らし、早く寝るなどして電気代も節約している。

 受給者を支援している北九州市社会保障推進協議会の内田義則事務局長(59)は「家賃が限度額の範囲内でも、高齢者が暮らせる家は限られる。自分で物件を探せなかったり、保証人が見つかりにくかったりする実態もあり、限度額が適正か慎重に検討する必要がある」と話した。
【ワードBOX】住宅扶助

 国が自治体ごとに世帯人数などに応じて限度額を決め、その範囲内で実費を支給する。共益費は対象外。2015年の改定で、現行制度となって初めて限度額が本格的に見直された。少子高齢化で空き家が増え、一般的な家賃水準が下がっていることなどから、都市部を中心に引き下げが目立った。生活保護は家賃に当たる住宅扶助のほかに、食費や光熱費のための生活扶助、医療費を賄う医療扶助などが支給される。

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☆考察
実際に生活の場の引き下げを検討するのでこうなっていく。
基本的な考えかたは「支払う家賃」ではなく「大家」側に対する補助や指導を行うことだ。
実際に大家さんは、支払う孤立しがちな高齢者よりも安定した収入があるはずだ。
なによりも安定した彩りある生活を守ることこそ重要だ。

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