高齢者カウンセラーは障害者 難病社長がビジネスモデル

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高齢者カウンセラーは障害者 難病社長がビジネスモデル

 障害者が在宅のまま、テレビ電話を通じて、介護・認知症予防のために高齢者をカウンセリングする――。こんな取り組みに、愛知県東海市が今年度から協力する。障害者の就労を促すのが狙いで、市がカウンセラー養成講座の受講料を事実上、全額補助する。障害者が働けるようにと、難病で体をほとんど動かせない市在住の佐藤仙務(ひさむ)さん(27)らが考えたビジネスモデルという。

 佐藤さんは脊髄(せきずい)性筋萎縮症で、左手の親指などがわずかに動くだけだ。だが、話すことはでき、指先や視線でパソコンを操作し、電話やメールを駆使する。ホームページや名刺などの制作会社の社長として、障害者を雇用している。

 特別支援学校を卒業後、就職できず挫折を繰り返した。傷つく言葉を浴びたこともあったという。それでも「自分で働いて、稼いでみたかった。自分が一歩踏み出せば、ほかの障害者も働けるようになれるのではないか」。19歳で、同じ難病と闘う友人と起業した。

 一般社団法人日本ピアカウンセリングアカデミー(東京、JPA)の代表理事も務めている。そこで考えたビジネスモデルが、障害者をカウンセラーに養成し、インターネットを介したテレビ電話で高齢者と定期的に対話するサービスだ。

 ただ、多くの高齢者が対価を払ってまでカウンセリングを受けるとは考えにくい。そこで、自治体や特別養護老人ホームなどの施設と契約を結べば利用者の負担軽減になると考え、東海市に提案を持ち込んだ。

 障害者がJPAの養成講座を受けて一定レベルに達することを条件に、市は受講料を事実上全額補助することを決め、今年度の補正予算で5人分60万円を組んだ。鈴木淳雄市長は「ここまで考えてくれたので応援したい。まずは障害者のカウンセラーを養成し、育った段階で次の展開につなげたい」。うまくいけば、将来的には独り暮らしの高齢者の見守りなどにも役立てたい考えだ。

 佐藤さんは「東海市の取り組みを成功例にして、障害のある人にも高齢者にも優しいまち、支え合えるまちとして全国に発信したい」と意気込んでいる。(豊平森)

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