抗血栓薬を服用する高齢者の頭部外傷に注意

★考察

抗血栓薬(大きく分けて3種類)の服用は介護施設も含めて高齢者の服用は多い。
店頭などの低エネルギー外傷でも問題が大きくなりやすい。
問題なのは「転倒の多さ」へのアプローチだと思う。

転倒してしまいやすいのは昨今報道されている「多剤服薬」の影響はどうであろうか?
高齢者は転倒すると重篤になりやすい、というのは以下のデータでわかってきたのだから「転倒しない」方向への対応を期待する。

ここまで考察★

 高齢者の頭部外傷が増加しており、特に抗血小板薬や抗凝固薬などの抗血栓薬を服用している場合は重症化しやすいため注意が必要なことを社会に啓発する「Think FAST」キャンペーンが始まった。第43回日本脳卒中学会学術集会(STROKE 2018、3月15~18日、開催地:福岡)で、同キャンペーン実行委員会の末廣栄一氏(山口大学脳神経外科)が発表した。

 日本脳神経外傷学会が集計している日本頭部外傷データバンクによれば、重症頭部外傷受傷者に占める高齢者(65歳以上)の比率は徐々に上昇し、直近では51.7%と半数を超えた。高齢者の受傷原因は転倒・転落が54.8%と、全年齢層(40.7%)に比較して多い。交通事故のような高エネルギー外傷は少ないが、転帰良好率は全年齢層の30.3%に対して高齢者では14.6%と低く、死亡率も全年齢層の35.8%に比べ高齢者は43.8%と高い。

 その理由として加齢に伴う全身の生理学的予備能の低下、合併症の頻度の上昇、脳組織や脳血管の脆弱性の亢進などが考えられるが、抗血栓薬の服用による凝固異常も大きな因子という。

 同じデータバンクによれば、頭部外傷を受傷した高齢者の抗血栓薬服用率は31%と高かった(内訳:抗血小板薬のみ17%、抗凝固薬のみ9%、両剤併用5%)。しかも、抗血栓薬を服用している高齢者の頭部外傷では服用していない高齢者に比べ出血性病変の出現率が有意に高率であり、来院時は会話可能なものの短時間で急速に意識障害が進行するTalk and Deteriorateに至る割合も有意に高かった。

 末廣氏は「高齢者の頭部外傷は、転倒・転落といった低エネルギー外傷が多いにもかかわらず予後は悪く、抗血栓薬の服用が重症化の要因になっている。このような高齢者の頭部外傷の危険性と迅速な対応の必要性を社会に啓発する必要がある」とキャンペーンの主旨を解説した。「Think FAST」とは、「Think First Anti-coagulants/ -platelets in Senior neuroTrauma patients.」を略したものだ。

 キャンペーンの実行委員長は今期の学術集会長を務めた山口大学脳神経外科教授の鈴木倫保氏で、日本脳神経外科学会、日本救急医学会、日本脳神経外傷学会、日本脳卒中学会、日本循環器学会が後援する。

 一般市民に対して、(1)抗血栓薬の適切な服用の重要性、(2)高齢者の転倒・転落による頭部外傷の危険性(特に抗血栓薬服用者)、(3)頭部打撲時の適切な対処法(医療機関の受診)――などを啓発していく計画だ。

 また医療側に対しても、抗血栓薬服用中の頭部外傷患者は軽症であっても医療機関を受診する必要があることを周知するほか、頭部外傷患者に対する迅速な画像診断や厳重な神経症状の観察、抗血栓薬を服用している外傷性頭蓋内出血患者に対する適切な中和剤の使用を呼びかける。さらに、抗血栓薬服用者の頭部外傷の疫学調査や病態の解明、診療ガイドラインの作成なども検討している。

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