福祉大国スウェーデン発祥、触れるケア「タクティール」とは

★考察★ 

私もタクティール講習修了者だ。
実際になんども介護施設で実施してきた。

効果的だと感じる時は
「眠れない」と訴える認知症高齢者さんにケアスタッフがベッドサイドに座り、しっかりと手のひらや腕を撫でさすっているうちにちょっと失礼だが「子供のように」寝入ってしまうことだ。

テキストを年に数回読み直し優しいふれあいを実践している。

★ここまで考察★

 高齢化が進む日本社会において、介護は誰もが避けられない問題だ。特に子が親を介護する際に、意外に大きな壁になるのは、お互いが大人だということだという。助けてもらう親にもプライドがあり、そう思うと、助ける子の方も遠慮がちになる。

 でも、体に“触れる”ことには大きな癒しの効果があり、すでに医療や介護の現場でも取り入れられているという。福祉大国スウェーデン発祥の“触れるケア”タクティールケアのインストラクター、原智代さんに聞いた。

「今、日本の病院や介護施設でも行われているタクティールケアは、心地よさと安心感、痛みの緩和をもたらしてくれるケアの手法で、スウェーデンの未熟児ケアの中から生まれました」と、原さん。

 発祥が1960年代というから医療技術面もひと昔前。未熟の状態で生まれて来た子供の小さな命を、何とかつないで育てようとした看護師たちが考案したという。

「ケアの中で、看護師の手でたくさん体に触れられた子は血流量が増加し、体温の上昇や安定が見られ、触れられなかった子に比べて成長の度合いに明らかな差がありました。この経験から“体に触れる”ことの有効性を確信し、手、脚、背中などをやさしく手でなでさするメソッドを確立。障害児やがん患者の終末期ケアなどにも使われるようになりました」

 日本では2006年から、当初は認知症ケアの一環として取り入れられた。

「本国スウェーデンでも、ここ20年ほどは高齢者や認知症のケアとして広く行われるようになりました。日本の病院や介護施設、在宅介護などに導入されると、認知症による攻撃性が劇的に収まったり、リウマチの痛みが和らいだりするなど、治療・改善効果も見られ、以来、大変、注目されています。ストレスの多い現代人には、この癒しを必要とする人も多く、要介護の高齢者だけではなく、介護をするご家族にも施術して、喜ばれています」

 現在日本では、日本スウェーデン福祉研究所に認定された資格取得者が、病院や介護施設などで施術を行っている。認定取得のための講座受講者には医療・介護関係者のほか、家族のために施術を覚えたいという一般人も多いという。

◆不安や恐怖が取り除かれ、不眠や便秘、冷え解消も

 人の手が体に触れることで、なぜこのような健康効果が得られるのだろう。

「1つには、皮膚から伝わる刺激によって脳の視床下部からオキシトシンと呼ばれるホルモンが分泌されることによると考えられます。オキシトシンはストレスを和らげて幸せな気分にさせる働きがあり、別名“幸せホルモン”“愛情ホルモン”などとも呼ばれています。

 また、痛みの緩和にはゲートコントロールも関連していると思われます。これは興奮状態のときには痛みが強く感じられ、患部をなでさするなど触覚を刺激すると痛みの伝わりが弱まるというもの。今のところ1つの学説ではありますが、痛いときに無意識に患部をさすることからも効果は明らかでしょう」

 そしてもう1つ重要なことは、人に触ってもらうことで自分を確認でき、不安が解消されるということだという。

「発端になった未熟児ケアでは、身体機能が未熟で、自分が何たるかもわからない状態のところに『ここがあなたの背中よ』『腕はこんな形よ』と、やさしく触れてもらうことで初めて自分を“感じる”ことができる。この感覚が生きる力を呼び覚ますのです。

 認知症が重症化してきたときにも感覚が鈍り、同じように自分の体のイメージができなくなることがあります。絶対に入れない小さなすき間に無理に入ろうとするような行動や、徘徊、攻撃などの周辺症状(BPSD)の裏には、底知れぬ不安があるのです。

 また認知症に限らず高齢になると、身体機能が衰えて思うように行動できなかったり、危ないからと、何かと禁止・抑制を強いられたりして、周囲が思う以上に不安や怒り、恐れが蓄積しているもの。そんな気持ちが理解されず、ないがしろにされることでも自分の存在意義を見失い、ネガティブな感情が増します。

 こんな高齢者にやさしく体に触れると、不安が取り除かれ、大事にされている自分を確認できるようです。タクティールケアの施術後、涙を流して泣かれるかたが多いのも、単に心地よいというだけでなく、緊張した心がほぐれた証。実は施術する私たちも、ケアをする手のひらを通して心地よさを感じ、体がポカポカしてとても前向きな気分になります。施術後はお互いの間に親しみのある信頼関係も生まれます。このポジティブな精神状態が生きる力を呼び、医療による治療効果を上げることにもつながるのです」

 高齢者の多くが訴えるという不眠や便秘も、ベースには不安や心配、恐れなどによる緊張状態がある。タクティールケアを受けた高齢者からは、施術後体が温まってよく眠れた、便秘も解消したという声が数多く上がるという。

◆恥ずかしければ背中にそっと触れることから

 体に触れることは、個人的な領域に1歩踏み込むことでもある。

「ハグの習慣もない日本人には、体に触れられることに抵抗を感じる人もいます。それでも、たとえば小さい頃に、“いい子いい子”と頭をなでられると安心したり、痛いところにお母さんが手を当てると不思議に治ってしまったり。また悩みや悲しみに暮れているときに“大丈夫だよ”と背中をさすってもらうと、少し気が楽になったりしませんか?

 人に触れられることで得られる安心感や心地よさは、特に子供の頃に、大人になってからも少し弱ったときなど、いろいろな場面で体感していますから、心を込めて少しずつ距離を縮めていくと、抵抗感をなくすこともできます。

 タクティールケアの施術では、向き合って行う手と足、目を合わせずに行える背中のケアが基本メニューですが、特に背中は抵抗感が少ないよう。面積が広く、大切な脊髄があるため、心地よさも感じられやすいようです。

 親御さんを介護されるときに、触れることに抵抗があったり恥ずかしかったりするなら、日常の何気ない場面でそっと背中に手を当ててみることから始めてみてください。ご家族と触れ合うことが、大きな支えになるはずです」

※女性セブン2018年3月22日号

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